D2Cブランドのデパート「ネイバーフッド・グッズ」は"顧客体験”ありきのお店
目次
■消費者も、D2Cブランドも喜ぶ体験型のお店
オンライン主体で商品販売するD2Cブランドを取りそろえた、新たな百貨店「ネイバーフッド・グッズ」。
「消費者」には居心地のよいライフスタイルの提案を。「D2Cブランド」には「販売」+「マーケティングの支援」を提供している。
リアルの場ならではの体験提供型の「ネイバーフッド・グッズ」とは?
●toC(消費者)視点での価値
まず、一つ目が「多様な価値」提供。
ライフスタイルのさまざまなシーンで活用できるほど、「多様な価値」を提供してくれる場であるということだ。
店には、アパレルから生活雑貨まで旬な「D2Cブランド」がセンスよく展示され、「新しいライフスタイル」を提案してくれる。加えて、商品ローンチイベントやコミュニティーイベントなどの催事が毎日のように行われ、ライブ感があって飽きない。
二つ目が「コミュニティづくり」。
店舗に併設されたカフェもおしゃれで快適、思わず立ち寄って食事をしたり、時間をつぶしながら新しいブランドをアプリで検索、店員とチャットしたりと、消費者のライフスタイルに合わせてさまざまな使い方ができる
「商品をトライアルする場」「ブランドとコミュニケーションする場」「地域のコミュニティーハブとしての場」など 、従来のリテールを超えた「さまざまな価値」を持っている
●toB(ブランド)視点での価値
一つ目が「販売+コンサルティング」
スタッフは、出店者の「ブランドアンバサダー」となり、ブランドの魅力・ストーリーを消費者に伝えることを徹底する。そして、消費者がスタッフと交わしたコミュニケーションを基に、ブランドに対して消費者のインサイトをフィードバック
同社のビジネスモデルは、出展ブランドからの展示費用と販売委託手数料(販売マージン)からなる。この月額固定の展示費用には、ブランド側へのコンサルティングフィーが含まれている。
二つ目が「デジタル経由のマーケティングデータ提供」
アプリを通じて各商品の情報提供に加え、セルフ決済やチャット機能も提供している。カメラによる顧客の動線分析も実施している。こうしたデジタル経由で集められたユーザーの情報は、前述のスタッフを通じて集まった消費者のアナログ情報と共に、ブランド側に密にフィードバックされていく
この百貨店のリアルな体験記は以下に詳しい。写真満載なので、より実感を持って知ることができる。
■お店のスタッフは販売員じゃなく「ストーリーテラー」
お店で働くスタッフは、普通なら販売員。いかに商品を売るか。でも、「ネイバーフッド・グッズ」のスタッフは、売ることはしなくてよい。いかにブランドの魅力を伝えるか、である。
店舗スタッフは、「ストーリーテラー」として位置づけられていて、顧客に対しフレンドリーに各ブランドのストーリーを伝える役割がある。実際に店舗に赴いても、売りつけられている感覚は微塵もない。専用アプリではセルフ決済が出来るほか、チャット機能を通じてスタッフに質問をしたり、店内に併設されたレストランまで商品を持ってきてもらうこともできる。
■リアルで新たな客層の開拓に
オンラインをメインに展開するD2Cブランド。リアルに接点をもつことの意義は大きい。
ネット主体のD2Cビジネスは低いコストが強みだった。ただ、優良顧客との接点を増やしにくいのが課題。ネイバーフッドは観光客や忙しくて新ブランドを探す余裕のない人など「ネットでは捕捉できない客へのアプローチも可能にした 」
またリアルで補足できるデータも充実している。
調査会社リテールネクストと協力して店内に無数のカメラを設置。客の画像から人工知能(AI)で年齢や性別、どこで立ち止まったかなどを示す「ヒートマップ」を作る。どんな属性の客が商品のどこに興味を持つかなどが具体的にわかるため、メーカー側はマーケティングをしやすくなる。
■一方、従来型の百貨店は閉店相次ぐ
従来からある米国百貨店はどこも業績が悪化。特に所得が上位に集中し、中流階級が減っていく中にあっては、中流以下の百貨店は限界まで追い込まれ、閉店も相次ぐという状況だ。日本の百貨店も同じ状況だ。
モノを販売する百貨店から、体験を提供する百貨店へ。リアルの場をどう使うかが問われている。
withコロナ(コロナと付き合いながら生活を送る)時代になると、リアルの場に出るにしても、本当に行く価値のある場なのかが支持を得ていくだろう。それだけに体験が重要な意味を持つ。