EC化率30%の老舗デパート「ノードストローム」店舗×ECでつくる”顧客体験”
米国の老舗デパート「ノードストローム」。伝統ある百貨店ながらEC化率が30%。
現在、コロナにより厳しい局面を迎えつつも、デジタルと連携し新たな”顧客体験”を追求している。商業施設の一つのあり方を示してくれる。
目次
■店舗×ECがシームレスで「EC化率30%」
ノードストロームのEC化率が高いのは店舗とECをシームレスにつないでいるから。どんなサービスを展開しているのか?
●実店舗×ECのシームレスなサービス
・クリック&コレクト(店頭受け取り)
ウィメンズ館の地下には、広く設けられたEC購入商品のピックアップカウンターがあり、そこで商品を受け取れる。自白配送にすることも可能で、追加料金を払えば、当日配達もできる。
・モノを確かめて…その場で返品も
モノを確かめて気に入らなければ、返品受付のサービスカウンターで返品手続きも。カウンター横には返却ポストも有り、カウンターが混んでいれば、QRコードでアクセスして、サイト上で手続きを行うことも可能だ。
・リセール(中古品販売)でEC連携+新品時の価格確認も
全商品の下げ札にはQRコード付き。QR読み取ると、ノードストロームのEC上の「SEE YOU TOMORROW」のサイトに飛べ、リセール価格とともに、かつて新品として売られていた価格も確認できる。おトクを感じさせる仕掛け。
ECと連携しているので、気に入ったら、そのまま購入して手ぶらで帰ることもできる
店舗×ECがシームレスな旗艦店は、以下の訪問記事が参考になる。
■オン&オフライン統合した「顧客体験」を
実店舗とECをシームレスにするのも顧客体験のため。
ノードストロームは、デジタル戦略の責任者が、実店舗を含めて統合する体制になった。オン&オフライン統合して顧客体験をどうつくるかの判断である。
「正規価格、セール価格の両方の顧客に対するエンドツーエンドの体験を作るためにノードストロームが抱えているデジタルのアセット、そして実物的なアセットを統合し、監督する役割をウォーゼルが担う」
「ノードストロームはタッチポイントを横断する形で、顧客がどのようにショッピングを行い、ノードストロームとエンゲージメントを持つか、という全体的な視点から顧客により良いサービスを提供する助けとなるだろう」
■顧客満足のために「サービス」重視
ノードストロームでは、従来の「商品」ありきから「サービス」重視へのシフトへ。
●百貨店のマインドセット
従来のデパートは・・・
「これまでの(デパートの店舗が提供する)サービスは、商品の購入に関わるものがほとんどだった」
今のノードストロームは・・・
「どのようにすれば顧客が求める商品を手に取ってくれるかが問題だ。つまり、店舗内で商品を集めたり予約したりといったサービスが重要だ。そして、デパートの店舗の多くでこうしたサービスの重要性が高まっている」
「我々の考えでは、顧客はノードストロームをウェブサイトやオンラインストアとして見てはおらず、ファッション関連のリテイラーとして見ている。そして、我々は彼らにとって、いつでもどこでもどのような形でも、望んだ通りに買い物できる場所でありたいと思っている」。
「商品」から「サービス」重視へとマインドセットしている。
●もっとも需要のある「サービス」とは?
それは「スタイリング」。店舗だけではなく、アプリ・自宅に呼ぶなど選択肢が充実している。
これまでは、スタイリストは店舗内でのサービスに限定されていた。そこでノードストロームは2017年に、オンラインチャットやノードストロームのモバイルアプリでスタイリストと話せる、スタイルボード(StyleBoard)というサービスを立ち上げた。スタイリストはスタイルボードと呼ばれるものに商品一式を集め、それを買い物客に見てもらうために送信する。ノードストロームはまた、ロイヤリティメンバーに対し、年に1度、スタイリストを自宅に呼べるサービスを提供
■洋服レンタルサービスとの提携
洋服のレンタルサービスの広がりを受け、その事業者と連携する動きが活発だ。
ノードストローム・ラック(Nordstrom Rack)の24店舗で、レント・ザ・ランウェイで着られている衣類を購入(またはレンタル)できる。いわば店舗内で再販を行うサービス
今回のみならず、両社は近年たびたびコラボを行ってきた。昨年ノードストロームは、カリフォルニア州の5店舗でレント・ザ・ランウェイの衣類の受け取りと返却を受け付けるサービスを展開。11月にはこのサービスの延長と、さらに全米24店舗に拡大することが決定した。
老舗デパートの「ノードストローム」は、実店舗とEC(デジタル)を組み合わせ、より優れたお買い物体験を追求し続けている。その結果のEC化率30%。
オン&オフラインを融合させ、「サービス」を強化するリテールの動きは今後も拡大していく。