“お買い物体験”どうなる?を考えるブログ

OMO、アフターデジタル、リアル店舗、EC、D2Cなど「お買い物体験」にまつわる情報をまとめています

「北欧、暮らしの道具店」”ECメディア”としてユニークな価値提供を

単なる物販ではなく、ECメディアの立ち位置でライフスタイルの提案をする「北欧、暮らしの道具店」。顧客接点の拡大、映像コンテンツへの取組、そして、企業のマーケ支援と…ECメディアとしてユニークな価値提供を行っている。どんな価値提供を進めているのだろうか?

 

目次

 

■アプリ、Lineスタンプと、顧客接点を強化

まずはiOSアプリからスタート。3カ月で10万DL。Webサイトに比べて滞在時間やアクティブ数は高く、購入の25%はiOSアプリ経由にも。

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次にAndroid版を公開

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Line公式アカウントから 、LLineスタンプを開始し、さらなる友だち獲得を進めている

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■オリジナル「ドラマ」「映画化」とコンテンツを続々

オリジナルドラマ第2弾がスタート

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オリジナルドラマの「映画化」も

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■なぜ、ドラマ・映画をつくるのか?

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「北欧、暮らしの道具店」は、物販じゃなくライフスタイルを提案するECメディアという立ち位置。

「それが美味しいジャムの時もあれば、素敵な食器の時もあれば、お洋服の時もあれば、コンテンツの時もある。お客様が『フィットするくらし』だと感じるものであれば、なるべく広く、多くのサービスを提供したいと考えています」

その上で、なぜ映像配信なのか?

「これまで映像は『放送』と『配給』しかなかったので、いかに有限の枠を取るか、の競争でした。そうなると当然マスを対象とした作品が儲かるのでニッチなコンテンツの居場所がない。ところが今そこに『配信』というプラットフォームが生まれて、供給が無限に増えた。するとお客さんは書籍や音楽のように無数にあるコンテンツの中から自分に合うものを探すようになる。

 映像コンテンツが無数に生まれる中で、より自分に合ったものを見たいコンテンツを求める消費者も。そこで…

そこで、僕らのお客さんが好きなスタイルで雑貨や洋服を売るのと同じ感覚で、映像コンテンツを提供することができるのではないか、と考えたんです」   

映像という情報量の多いコンテンツを通して、お客様の「フィットするくらし」を届けていく

 

■「ライオン」「森永」とタイアップドラマ

ライオンの柔軟剤「ソフラン プレミアム消臭」とのタイアップドラマ

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 森永製菓「小麦胚芽のクラッカー」とのタイアップドラマ

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●なぜ、タイアップドラマなのか?

自分たちのお客様にとって、どストライクな映像作品がないことが起点

僕たちのお客様の間でずっと人気ナンバー1を維持している映像作品は、かもめ食堂で、もう15年も前の作品なんですよね。肌感覚ではあるんですが、お客様にとってどストライクな作品って、大体5年に1本ぐらいしか出てきていない。

お客様が見たいと思える作品が圧倒的に不足しているなと感じていたので、僕たちがお客様に向けた作品を作ることで、ニーズに応えられるのではないかと。収益が出るかどうかは未知数でしたが、お客様に喜ばれることは間違いない。であれば、一旦やってみようと実施に踏み切りました。

タイアップの形をとることで、制作側×ファン×広告主がハッピーは循環がつくれる

 だからこそ、作品の制作側は潤沢な予算で納得のいく作品が制作でき、ファンは満足いく作品に出会え、映画の世界観を活用して広告出稿された企業さんは素敵なブランディングができた。ステークホルダー全員がハッピーという素敵な企画ですよね。それと同じようなことが、『青葉家のテーブル』でもできるのではないかと考えました。

 本編とは別にアナザーストーリーとしてタイアップドラマを作ることで、世界観に共感してくれている企業とお客様が、僕らを媒介につながることができる。そうすれば、クラシコム、広告主、お客様全員が幸せになれると思ったんです。

 

■ECメディアとして企業のマーケ支援へ

ECメディアの「北欧、暮らしの道具店」は、新しい形の出版社と捉えると、企業がマーケティングにどう活かせるかがクリアになる。

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「フィットする暮らし」というユニークなポジションをとり、熱心なファンを抱える「北欧、暮らしの道具店」。以下は、このメディアだからの価値だ。

「ある特定のライフスタイルに対するプロトコルを完全に理解している」こと。趣味性の高いメディアでは、「わかってないのに、儲かりそうだからやってるな」と、発信者の思惑をユーザーに瞬時に見抜かれてしまう。特定のカテゴリーのユーザーへコンテンツを届けるためには、その特定のカテゴリーにおけるプロトコルを深く理解することが重要だという。

 「趣味性の高いメディアでは、お客様が受け入れられるカプセルにコンテンツを入れないと、受け入れられません。お客様に受け入れられる商品、広告、動画コンテンツを届けるパッケージング能力が我々の強みです」

 

「フィットする暮らし」という軸にファンを増やしてきた「北欧、暮らしの道具店」。

自社×ユーザー(ファン)×メーカーとステークホルダー全てが満足する価値提供づくりを進めているユニークなECメディアである。

EC化率30%の老舗デパート「ノードストローム」店舗×ECでつくる”顧客体験”

米国の老舗デパート「ノードストローム」。伝統ある百貨店ながらEC化率が30%。

現在、コロナにより厳しい局面を迎えつつも、デジタルと連携し新たな”顧客体験”を追求している。商業施設の一つのあり方を示してくれる。

 

目次

 

■店舗×ECがシームレスで「EC化率30%」

ノードストロームのEC化率が高いのは店舗とECをシームレスにつないでいるから。どんなサービスを展開しているのか?

www.wwdjapan.com

●実店舗×ECのシームレスなサービス

・クリック&コレクト(店頭受け取り)

ウィメンズ館の地下には、広く設けられたEC購入商品のピックアップカウンターがあり、そこで商品を受け取れる。自白配送にすることも可能で、追加料金を払えば、当日配達もできる。

 

・モノを確かめて…その場で返品も

モノを確かめて気に入らなければ、返品受付のサービスカウンターで返品手続きも。カウンター横には返却ポストも有り、カウンターが混んでいれば、QRコードでアクセスして、サイト上で手続きを行うことも可能だ。

 

・リセール(中古品販売)でEC連携+新品時の価格確認も

全商品の下げ札にはQRコード付き。QR読み取ると、ノードストロームのEC上の「SEE YOU TOMORROW」のサイトに飛べ、リセール価格とともに、かつて新品として売られていた価格も確認できる。おトクを感じさせる仕掛け。

ECと連携しているので、気に入ったら、そのまま購入して手ぶらで帰ることもできる

 

店舗×ECがシームレスな旗艦店は、以下の訪問記事が参考になる。

www.mashupreporter.com

 

■オン&オフライン統合した「顧客体験」を

実店舗とECをシームレスにするのも顧客体験のため。

digiday.jp

ノードストロームは、デジタル戦略の責任者が、実店舗を含めて統合する体制になった。オン&オフライン統合して顧客体験をどうつくるかの判断である。

正規価格、セール価格の両方の顧客に対するエンドツーエンドの体験を作るためにノードストロームが抱えているデジタルのアセット、そして実物的なアセットを統合し、監督する役割をウォーゼルが担う」

 「ノードストロームタッチポイントを横断する形で、顧客がどのようにショッピングを行い、ノードストロームとエンゲージメントを持つか、という全体的な視点から顧客により良いサービスを提供する助けとなるだろう」

 

顧客満足のために「サービス」重視

ノードストロームでは、従来の「商品」ありきから「サービス」重視へのシフトへ。

digiday.jp

●百貨店のマインドセット

従来のデパートは・・・

「これまでの(デパートの店舗が提供する)サービスは、商品の購入に関わるものがほとんどだった」

今のノードストロームは・・・

「どのようにすれば顧客が求める商品を手に取ってくれるかが問題だ。つまり、店舗内で商品を集めたり予約したりといったサービスが重要だ。そして、デパートの店舗の多くでこうしたサービスの重要性が高まっている」

 「我々の考えでは、顧客はノードストロームをウェブサイトやオンラインストアとして見てはおらず、ファッション関連のリテイラーとして見ている。そして、我々は彼らにとって、いつでもどこでもどのような形でも、望んだ通りに買い物できる場所でありたいと思っている」。

 「商品」から「サービス」重視へとマインドセットしている。

 

●もっとも需要のある「サービス」とは?

それは「スタイリング」。店舗だけではなく、アプリ・自宅に呼ぶなど選択肢が充実している。

これまでは、スタイリストは店舗内でのサービスに限定されていた。そこでノードストロームは2017年に、オンラインチャットやノードストロームモバイルアプリでスタイリストと話せる、スタイルボード(StyleBoard)というサービスを立ち上げた。スタイリストはスタイルボードと呼ばれるものに商品一式を集め、それを買い物客に見てもらうために送信する。ノードストロームはまた、ロイヤリティメンバーに対し、年に1度、スタイリストを自宅に呼べるサービスを提供 

 

■洋服レンタルサービスとの提携

洋服のレンタルサービスの広がりを受け、その事業者と連携する動きが活発だ。

digiday.jp

ノードストローム・ラック(Nordstrom Rack)の24店舗で、レント・ザ・ランウェイで着られている衣類を購入(またはレンタル)できる。いわば店舗内で再販を行うサービス 

今回のみならず、両社は近年たびたびコラボを行ってきた。昨年ノードストロームは、カリフォルニア州の5店舗でレント・ザ・ランウェイの衣類の受け取りと返却を受け付けるサービスを展開。11月にはこのサービスの延長と、さらに全米24店舗に拡大することが決定した。

 

老舗デパートの「ノードストローム」は、実店舗とEC(デジタル)を組み合わせ、より優れたお買い物体験を追求し続けている。その結果のEC化率30%。

オン&オフラインを融合させ、「サービス」を強化するリテールの動きは今後も拡大していく。

D2Cブランドのデパート「ネイバーフッド・グッズ」は"顧客体験”ありきのお店

目次

 

■消費者も、D2Cブランドも喜ぶ体験型のお店

オンライン主体で商品販売するD2Cブランドを取りそろえた、新たな百貨店「ネイバーフッド・グッズ」。

「消費者」には居心地のよいライフスタイルの提案を。「D2Cブランド」には「販売」+「マーケティングの支援」を提供している。

リアルの場ならではの体験提供型の「ネイバーフッド・グッズ」とは?

toyokeizai.net

toC(消費者)視点での価値

まず、一つ目が「多様な価値」提供。

ライフスタイルのさまざまなシーンで活用できるほど、「多様な価値」を提供してくれる場であるということだ。

店には、アパレルから生活雑貨まで旬な「D2Cブランド」がセンスよく展示され、「新しいライフスタイル」を提案してくれる。加えて、商品ローンチイベントやコミュニティーイベントなどの催事が毎日のように行われ、ライブ感があって飽きない。 

二つ目が「コミュニティづくり」。

店舗に併設されたカフェもおしゃれで快適、思わず立ち寄って食事をしたり、時間をつぶしながら新しいブランドをアプリで検索、店員とチャットしたりと、消費者のライフスタイルに合わせてさまざまな使い方ができる

「商品をトライアルする場」「ブランドとコミュニケーションする場」「地域のコミュニティーハブとしての場」など 、従来のリテールを超えた「さまざまな価値」を持っている  

toB(ブランド)視点での価値

一つ目が「販売+コンサルティング

スタッフは、出店者の「ブランドアンバサダー」となり、ブランドの魅力・ストーリーを消費者に伝えることを徹底する。そして、消費者がスタッフと交わしたコミュニケーションを基に、ブランドに対して消費者のインサイトをフィードバック 

同社のビジネスモデルは、出展ブランドからの展示費用と販売委託手数料(販売マージン)からなる。この月額固定の展示費用には、ブランド側へのコンサルティングフィーが含まれている。 

 二つ目が「デジタル経由のマーケティングデータ提供」

アプリを通じて各商品の情報提供に加え、セルフ決済やチャット機能も提供している。カメラによる顧客の動線分析も実施している。こうしたデジタル経由で集められたユーザーの情報は、前述のスタッフを通じて集まった消費者のアナログ情報と共に、ブランド側に密にフィードバックされていく 

 この百貨店のリアルな体験記は以下に詳しい。写真満載なので、より実感を持って知ることができる。

www.businessinsider.jp

 

■お店のスタッフは販売員じゃなく「ストーリーテラー

お店で働くスタッフは、普通なら販売員。いかに商品を売るか。でも、「ネイバーフッド・グッズ」のスタッフは、売ることはしなくてよい。いかにブランドの魅力を伝えるか、である。

店舗スタッフは、ストーリーテラーとして位置づけられていて、顧客に対しフレンドリーに各ブランドのストーリーを伝える役割がある。実際に店舗に赴いても、売りつけられている感覚は微塵もない。専用アプリではセルフ決済が出来るほか、チャット機能を通じてスタッフに質問をしたり、店内に併設されたレストランまで商品を持ってきてもらうこともできる。

digital-shift.jp

 

■リアルで新たな客層の開拓に

www.nikkei.com

オンラインをメインに展開するD2Cブランド。リアルに接点をもつことの意義は大きい。

 ネット主体のD2Cビジネスは低いコストが強みだった。ただ、優良顧客との接点を増やしにくいのが課題。ネイバーフッドは観光客や忙しくて新ブランドを探す余裕のない人など「ネットでは捕捉できない客へのアプローチも可能にした 」

 またリアルで補足できるデータも充実している。

調査会社リテールネクストと協力して店内に無数のカメラを設置。客の画像から人工知能(AI)で年齢や性別、どこで立ち止まったかなどを示す「ヒートマップ」を作る。どんな属性の客が商品のどこに興味を持つかなどが具体的にわかるため、メーカー側はマーケティングをしやすくなる。

 

■一方、従来型の百貨店は閉店相次ぐ

従来からある米国百貨店はどこも業績が悪化。特に所得が上位に集中し、中流階級が減っていく中にあっては、中流以下の百貨店は限界まで追い込まれ、閉店も相次ぐという状況だ。日本の百貨店も同じ状況だ。

www.wwdjapan.com

 

モノを販売する百貨店から、体験を提供する百貨店へ。リアルの場をどう使うかが問われている。

withコロナ(コロナと付き合いながら生活を送る)時代になると、リアルの場に出るにしても、本当に行く価値のある場なのかが支持を得ていくだろう。それだけに体験が重要な意味を持つ。

 

 

”売らず”に”体験”を提供するお店「b8ta(ベータ)」

目次

 

■体験を提供するお店「b8ta(ベータ)」

消費者には「世界中のユニークなプロダクトを使って、試せる、体験を」。メーカーには「お客様が、どのように使い、どんな経験をしたのかをフィードバックを」。米国生まれの”体験型小売り”「b8ta」が提供する価値とは?

jp.techcrunch.com

●なぜ、b8taは生まれた?

オンラインではできず、リアルでできること。それは・・・

「オンラインでは確かにスクリーンでいろいろなことができるが、プロダクトに触れることはできない。リテールで、店舗で何ができるかと言えば、行かなければ分からない体験、例えばスピーカーの音質やブランケットの肌ざわりを体験することができるということだ」

 また作り手であるメーカーからすると、顧客と関係作りができない売り方はうれしくない。

「カスタマーリレーションシップが作れない売り方をメーカーも望んでいない」「メールなどの通知ではなく、双方向のリレーションシップが持てる方法を、店舗でのビジネスモデルで実現できないかと考えた」

toCには「体験」を。toB作り手(メーカー)にはそのフィードバックを。というビジネスモデルにたどり着く

 

●リアルな場+優れた顧客体験をセットで提供

メーカーがお店で体験提供しようとすると以下の問題に突き当たる

メーカーがリアル店舗を運営して顧客との接点を持とうとすると、テナント料・家賃や従業員の賃金が固定費として必要になる。 

 そこで、b8taは「アズ・ア・サービス」としてマルッとパッケージ提供。

物理的なスペース提供のほかに、店舗を運用するためのPOSやプロダクトのデータベース、在庫管理、従業員のシフト管理や教育の仕組み、顧客体験の分析レポートなどがパッケージされている

中でも、顧客に体験を提供するスタッフのトレーニングは力を入れている

従業員のトレーニングをかなり重視しているという。「1〜2週間かけてトレーニングを行い、プロダクトやブランドに関する質問に答えられるようにする」

  

■米国トイザらス、体験型のお店として復活 

米国で全店舗を閉店したトイザらス。b8taと提携し体験型のおもちゃ屋さんとして開業する。

forbesjapan.com

新生トイザらスはお店では体験を。

子供たちが遊べるスペースやデモンストレーションなどの「アナログ」な体験と、「デジタル」な体験の両方が可能なものになると説明する。また、商品の在庫がない場合でも、店内に設置したスクリーンとキオスクを通じて、toysrus.comから購入することができるという。

 メーカーには、お店に商品を置く「出品料」をもらい、その対価とし消費者から収集したデータをフィードバックする。

 

■今夏、日本で「b8ta」がオープン

forbesjapan.com

●メーカーに提供するマーケティングデータとは?

リアルの行動データを、WEBサイトのように提供するのはおもしろい。

区画の前を通り過ぎた人の数をインプレッションと読んでいて、まずは何人が区画を通り過ぎたか、を計測します。その中で5秒間立ち止まった人は「興味がある」とカウント。さらに従業員が商品のデモンストレーションを行えば、デモンストレーションの数をカウントします。そして、それらのデータは弊社が提供するプラットフォーム上で売上と連動し、Google Analyticsのような感覚ですべてチェックが可能です。 

●日本ではどんなお店になるのか?

日本の店舗はよりバラエティに富んだ商品ラインナップになりそうだ。

b8taはさまざまな地域で店舗を展開していて、店舗ごとにその地域におけるイノベーティブな商品は基本的におさえるようにしています。日本も同じようにできればと思っていますが、b8ta自体も5年やっていく過程で、ガジェット系だけでなく幅広い商品を展示するようになっていて、店舗のコンセプトも発見と体験にシフトしてます。ファッション、コスメ、飲料・食品(店頭では試飲・試食のみ)、アプリ、サブスクリプションサービスなども出品いただけます。日本は間口を狭めず、伝統工芸も含めて、いろんなものに触れていただきたいと思っています。

 

■「蔦屋家電+」は「日本版 b8ta」モデルで展開中

markezine.jp

 

リアルでしか提供できない価値に特化した「b8ta」。

商品販売ではなく、メーカーへの体験提供サポート&データ提供というビジネスモデルにより、「売らない」という新たなリテールの形に。

コロナの感染防止により外出自粛モードは逆風ではあるが、アフターコロナの世界ではリアル=体験価値はより高まっている。それだけに、体験型のお店「b8ta」は注目のリテールだ。

ウォルマート、”実店舗”を武器に”デジタルシフト”

目次

 

■実店舗という資産×デジタルで復活

「ネットで注文すれば、自宅に届く」Amzonに代表されるECの浸透で、「時代遅れ」と言われていたウォルマート。だが、今や業績は好調。

business.nikkei.com

マクミロンCEOが「オムニチャネルの顧客体験を作り上げる努力を続けている」と言及した米国事業のEC(電子商取引)売上高は前年同期比41%増え、業績をけん引した。ECの成長率は、6四半期連続で4割前後を維持している。決算発表後、株価は上場来高値を付け、好調ぶりを見せつけた。

好調の要因は、お店を持っているという自らの資産を武器に変えたこと。「負の遺産」とも言われた実店舗でECに対抗し、新たな顧客体験をつくっている。

●オンライン・グローサリー・ピックアップ(OGP)

食料品を買うのに、車から降り、店内を歩き回り、商品を選び、お会計をする。お客にとっての手間を解消しれくれたのがこのサービス。

ネットで食料品などを注文して店で受け取る、取り置きサービス。客はあらかじめ専用アプリ内で牛乳や野菜など商品を選んで会計し、取りに行く店と時間帯を選択する。指定した時間に合わせ来店し、ピックアップ専用の駐車スペースに止めると従業員がトランクまで持ってきてくれる仕組みだ。 

このサービスの様子は以下の記事にも詳しい 

business.nikkei.com

  

■売場減らすも、売上拡大するビジネスモデルに転換 

オムニチャネル対応がうまくいったことで、これまでのビジネスモデルにも変化が生まれている。

blogos.com

1962年の創業以来ウォルマートは、店舗数増大→規模の経済性の追求で、店舗数を増やしながら成長してきた。だが、オムニチャネル化により、オンラインでも売上を伸ばせる形になったことで、店舗数(=売場)が減っても、売上は増えるビジネスモデルに変貌していっているのだ。

 

リアル店舗内のデータで広告事業

デジタルを取り入れ小売として復活を果たしたウォルマート。次は、店舗内のデータを活用して省力化・効率化を実現するとともに、広告でマネタイズする取り組みも視野に入れ始めている。

www.nikkei.com

ニューヨーク州マンハッタン郊外。住宅地の一角にウォルマートが力を入れるデジタル店舗がある。天井には数千個のカメラとセンサーが並び顧客の動きや売れ行きを細かく追跡する。現在はまだ試験段階だが「生鮮品の品質管理に役立つ」(男性店員)という。

今後はAI(人工知能)を用いたデータ分析をもとに、取引先メーカーにデジタル広告を販売することも視野に入れる。例えば、店で自転車を買った客には同社のネット通販サイトでヘルメットの広告を表示し、販売促進につなげる。

 

 

■EC=マーケットプレイスでも事業展開へ

ウォルマートの資産である実店舗を武器に成長続けるウォルマートが、Amazonの本業であるマーケットプレイスにも事業を広げる。

出品者が「 実店舗で商品を扱ってもらう」足掛かりとして出品するように、ここでも実店舗を持つ強みが生かされている。

 

■コロナ禍で売上好調、リアル×デジタル連携がより機能

r.nikkei.com

 

 

一時は、お店を持っていることが「負の遺産」と言われていたウォルマート

だが、ウォルマートは、実店舗が自分たちの資産=武器として、実店舗を活かした形でのデジタルシフトが功を奏した。

ウォルマートは、リアル起点の小売りの成功事例である。

 

ユニクロ、デジタルで“優れた顧客体験”を

成長を続けるユニクロは、デジタルを取り入れ、お客様がよりお買い物しやすい環境整備をどんどん進めている。中国での取組、日本で展開するアプリ、そして、体験型の店舗と、変化の激しいユニクロの動向を追ってみる。

 

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■中国ユニクロ、店舗とECの融合が進む

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中国の成長にデジタル対応は大きく寄与していると。

①オムニチャネル化

ユニクロでは、店舗とオンラインが融合した新しい小売りのスタイルを確立。特に国土が広い中国大陸では、店舗がECの倉庫の役割を担い、注文が入ると店舗在庫から発送し、購入された商品をいち早く届けられる体制も徐々に整備している。

2021年8月期には中国でのEC化率を3割超にしたいと計画中だ。

中国ユニクロのEC化率は、既に20%以上。コロナにより外出自粛もある中で、ユニクロのEC比率はより伸びていくことだろう。

SNSマーケティング

SNSプラットフォームで若年層を集客する取り組みが活発。

新商品や新しいイベントをSNS上で積極的に配信して集客している。中国大陸ではWeChat(ウィーチャット)やWeibo(ウェイボー)などのSNSプラットフォーム上のマーケティングによって、若年層の新規顧客が大幅に増加している。

そして、インフルエンサーの起用がハマっている。

ファッション業界で消費者に対しても大きな影響力を持つKOL(キー・オピニオン・リーダー=日本でいうところのインフルエンサー)の獲得にも成功。KOLが発信した情報を見て商品を購入した客がさらに自身のSNSで新商品のニュースや着こなしなどについて発信している。

 

■”着こなし”や”採寸”サービス。アプリに新規機能続々。 

2019年、ユニクロジーユーは、お買い物をサポートする便利な機能を続々とリリースしている。

●着こなし発見アプリ「StyleHint(スタイルヒント)」

www.ryutsuu.biz

自分の手持ちの服の写真を撮るだけで、世界中のインフルエンサーやユーザーの写真の中から、おすすめの着こなしをチェックすることができるサービス。写真にタグづけされたアイテムや類似アイテムは、ユニクロジーユーのECで購入できる。

ただ写真を撮ってアップするだけでおすすめの着こなしがわかる。探す手間をアプリが解決しているのだ。

●簡単&正確に体の採寸「MySize CAMERA(マイサイズカメラ)」

●商品ごとにお客に合うサイズを提案「MySize ASSIST(マイサイズアシスト)」

www.ryutsuu.biz

「マイサイズカメラ」は、スマートフォンタブレットのカメラ機能を使って、体の採寸をしてくれるサービス。

ユニクロアプリ上で利用でき、規定の画面にお客の身長と体重、性別、年齢を入力し、画面の指示に従って、正面と左側面の2方向から撮影した写真をアップロードすると、体の10カ所の寸法を推定して表示する。表示された数値は、オンラインストア上で自分の体の寸法を記録しておける「マイサイズ」機能に登録ができる。登録したデータは、別の商品を購入する際も、簡単に参照できる。

 また「マイサイズアシスト」は、身長や体重のデータに加え、体型の特徴や、「ぴったり」「ゆったり」といったお客の好みの着用感を入力すると、おすすめのサイズを案内してくれるサービス。

どちらも、オンラインでのサイズ問題を解決してくれるサービスだ。

 

■アプリに狙いが鮮明。ユニクロ=店舗体験、GU=流行

www.nikkei.com

ユニクロとGU、それぞれ独自のアプリがあるが、共通点はあれど設計思想には大きな違いも。

●共通点 

・トップはオンラインストアが固定=EC重視 (販売チャネル)

・コーディネート

・口コミ

・会員カード、クーポンやマイル (CRM機能)

●GU

若い女性がメインターゲットでトレンドにあった商材が多いだけに、スタイリングやコーディネートの重要度が高い

ユニクロ

・幅広い層×定番商品が多いため、チャット型のレコメンドエンジンを固定設置して御用聞きのような形。(お店の店員の役割)

・店舗内の在庫倹約、店舗限定チラシ等、入店後に使えるサービスも充実

それぞれのブランドのターゲットに即した機能を盛り込んでいる

 

■お店+公園(遊び場)の体験型店舗

2020年3月、ユニクロジーユー共同で、店舗でありながら公園でもあるファミリー層向けの体験型店舗をオープン。家族が遊べる場を用意して、そこで洋服も変えるという新たな取り組みもスタートした。

 

ユニクロは、デジタルサービスで利便性を充実させる一方で、リアルでは公園併設の体験型のお店をオープンしたりと、デジタル、リアルそれぞれの強みを理解し、使い分けている。このトレンドは確実に加速してく。

 

スターバックス、次の50年のお店とは?~デジタル×リアルの顧客体験

目次 

 

■デジタル×実店舗のニューリテール戦略

スターバックスが銘打つ「ニューリテール」戦略。

これは"デジタル”と”実店舗”を組み合わせて、新たな"顧客体験”を創り出そうというもの。

「持続的企業体制の構築をめざし、我々はスターバックスの次の50年のあり方を熟考している」(CEOケビン・ジョンソン氏)というスターバックスの次なる50年とは?

digiday.jp

 ●午前・午後で変わるフレキシブルな店舗

オフィス街でのこと。「忙しない朝は手早くコーヒーを、仕事が落ち着いた午後にはゆったりとコーヒーを味わいたい」。お店の立地特有の顧客行動に基づき、店舗フォーマット自体をパーソナライズ。

ニュージャージーでは、1日の時間帯によって顧客と店舗の関わり方が異なることが判明したため、我々は午前中は利便性を、午後は快適さを優先する形でグレンリッジのストアを進化させた。大都市では顧客の1日のルーティンを妨げないことが非常に重要になるため、時間帯によっては持ち帰り専門店が明らかに有効な策だ。しかし、ニューヨークのような慌ただしい街でも、顧客はくつろぎも希求している」

(スターバックス最高執行責任者/ロザリンド・ブリューワー氏)

モバイルでの予約注文(=モバイルオーダー)で利便性を提供したりと、デジタルを取り入れながら、1日の中で顧客との関わりが変わるお店づくりへとアップデートしている。

  

■中国スターバックスの大復活

中国スタバは、現在、「最高速度の成長」とのこと。 

中国であれば、一時はスターバックスコーヒーが、新興のluckin coffee(ラッキンコーヒー)に追い込まれました。ところが今は、中国のスターバックスだと、イートインのないスタンド型店舗を設けたり、専属配達員による1to1のデリバリーサービスを作ったりした効果で、ここ3年間でいま最高速度の成長を見せているそうです。 

careerhack.en-japan.com

デジタルで利便性を補完し、中国にあった店舗フォーマットに変えた成果である。

ただ、デジタルを駆使したとは言え、スタバの持つ「価値」=「サードプレイス・居心地」を毀損しない配慮は以下の通り。

 

■人との触れ合いは、これからも重要であり続ける

スタバにとってのデジタルとは何か?それはこの言葉に尽きる。

「目的は人間が人間らしくいるための時間を増やす手助けをする方法を見つけること」であり、「バリスタに代わるロボット[を置くこと]ではない」

(スターバックス プレジデント兼CEOケヴィン・ジョンソン氏)

デジタルは、人間=スタッフを支援するためのツール。人的交流の重要さは以下の通りだ。

「店舗における人と人との触れあい、という経験の構築に努めること」ピックアップ店ではキャッシャーの必要性は減るだろうが、それでも従業員を置き、彼らに顧客を出迎えさせるという。 

digiday.jp

 

■デジタル融合の話はあれど…リアル店舗の存在感!

今後デジタルを活用して利便性や省力化、最適化を進めていくが、「優れた居心地」をフィジカルで体験させてくれるリアル店舗の価値は、これからもスタバの強みであり続けるだろう。

以下のお店は、どれもリアルならではの良さに溢れている!

スターバックス リザーブ ロースタリー 東京

toyokeizai.net

スターバックス リザーブ ストア 銀座マロニエ通り

toyokeizai.net

スターバックス コーヒー 高輪ゲートウェイ駅店

ignite.jp

 

これから50年のスタバは、

・居心地のリアル(体験性)

・便利なデジタル

・人との交流

を組み合わせながら、デジタル×実店舗の融合が進んでいく。

NIKE、D2Cで“購入体験”を追求

目次

 

NIKEの”購入体験”への本気度

2020年3月下旬、ナイキは、ナイキ商品を取り扱うテーラーにこんな通達を。

・「ECサイトのUIやUXをナイキが求めるレベルにまで高めるように」という趣旨
・求めているのは、NIKEと顧客の関係を阻害しない体験を提供すること
・対応不可ならプロダクトを取り扱う事が難しくなる可能性も

digiday.jp

通達を受けたリテーラーからは「これまでにない厳しい姿勢」 とのこと。D2Cの強化を進めるNIKEにとって、「ブランドと顧客との関係をつくる購入体験」は重要事項。

この一年のNIKEの動きを追うと、この通達にたどり着く意図もよりクリアになるので振り返ってみる。

 

■アプリと店舗の結びつきを強化

 顧客体験をつくる上で、NIKEリアル店舗の重要性を説く

「当社と結びつきのもっとも強いカスタマーがいるのは当社の店舗だ。そこで、最高の体験を提供したい。これと逆の考えをもつ企業もいるだろう。アプリで買ってもらえるなら、店舗は必要ない、とね。だが、当社と当社のカスタマーにとって、これこそが最適なアプローチなのだ」。

(グローバルデジタル商品部門トップ・マイケル・マーティン氏)

 

 

digiday.jp

だから、アプリの店舗内モードでは…
・カスタマーが試着室や靴のサイズのリクエストを瞬時に行える
・特別価格での購入や限定商品の購入
・レジに並ぶ必要のないアプリ内での精算
と新しい体験を提供している
 

■テック企業の買収は、すべて”購入体験”につながっている

digiday.jp

2019年5月、NIKEは、”顧客にぴったりのサイズのシューズをレコメンドするスキャン機能「Nike Fit」”を発表。


このサービスは、
①まず、「Nike」アプリでほしいシューズを選ぶ
②次にNike Fitを開き、スマホのカメラを使って自分の足をスキャンする。
③すると顧客は、そのシューズの自分に合ったサイズをレコメンドしてもらえる
というもの

これが実現したのも、2018年4月に買収したテック系スタートアップの技術を使って開発したからこそのもの

 

Amazonからの離脱

 2019年11月、NIKEAmazonでの販売を中止した

よりダイレクトでパーソナルな関係を通して消費者体験を高めることへのフォーカスの一環として、ナイキは現在Amazonと共同で行なっているパイロットプログラムの終了を決断した」(NIKE広報担当)

digiday.jp

D2Cの売上が全体の30%を超えるNIKEにとって、サードパーティからは距離を置ける有利なポジションに来ていることもある

 

■D2C拡大にとってアプリがキモ

 NIKIは、自社アプリの「Nike+」に機能を投入し続ける。
・限定版商品の投入でスニーカーコレクターをターゲットとする「ナイキSNKRS(Nike SNKRS)アプリ」
・運動管理の役に立つアプリを求める、熱心なフィットネスファン向けの「ナイキトレーニングクラブ(Nike Training Club)アプリ&ナイキランクラブ(Nike Run Club)アプリ」

など

digiday.jp

 D2C事業の拡大を目指すNIKEにとって、アプリにさらに機能を追加して、
・ユーザーに購入や自社イベントへの参加の拡大
・商品デザインに関するユーザーの意見の収集 

など
アプリユーザーからより多くのアクティビティを引き出すことで、卸売業者への依存をさらに減らし、顧客により多くの購入を促す広告を出す可能性を進めている。
 

■コロナの影響下でもNIKE株は急騰

NIKEの2019年12月-2月(第3四半期)の売上高は、Eコマースの伸びに支えられ、アナリスト予想を上回る結果に。

NIKEは、これからもD2Cの見本企業として進化していく。